えーと、まず『splash!!』のほうですが、ずーっと水面下で進めていた巻頭特集が暗礁に乗り上げてしまい、また振り出しに戻ってしまいました。大人の手続きに従って1つ1つ着実に進めてきたつもりだけど、どうにもこうにも最後の山が動かず、最終的にはなかったことに......。『シーシュポスの神話』か、はたまたカフカの『城』か、延々と終わりのない回廊をグルグルまわってるような感覚を味わい、まだちょっと茫然としています。この調子でいったら発売は夏はおろか、秋頃になってしまいそうな予感......。でも、前号よりも面白い内容にしなければ意味がないので、時間をかけてでも胸を張ってお届けできるものを作りたいと思ってます。
というわけで、せめてこのページくらいはもうちょっと更新ペース上げていこうかなと。あんまりたいしたこと書けないと思うけど。

『1Q84』は、誰かから内容を聞かされる前に読みたいと思って、この本にまつわるすべての情報をシャットアウトして週末に一気読みしました。気づいたらその世界に引きずり込まれてるっていう、小説ならではの感覚はやっぱりたまんないもんがあるね。まだ半円が描かれただけの状態なので、このあとどんな形を見せてくれるのか気になります。三日月なのか、満月なのか。このままスパッと切って半月ってことはないよね? あと、この先、自分がハゲていったらこの本を心の拠り所にしようと思います(ウソ)。
ここ1ヶ月くらいの間に映画館で観た映画は、『フロスト×ニクソン』、『スラムドッグ$ミリオネア』、『グラン・トリノ』、『チェイサー』、『スター・トレック』。それなりに観たいと思ったものを選んで観てるので、ハズレはなかったです。とくに『グラン・トリノ』と『チェイサー』は今年観た中でも1~2を争う面白さでした。以下、ネタバレありなので、これから観る人は絶対読まないように!

まず、『グラン・トリノ』。この映画、めちゃめちゃ面白いんだけど、クリント・イーストウッドが自分の命をかけた最後のシーン、あそこの解釈の仕方について、僕が受け止めたものがもし監督の意図していた通りのものだとしたら、諸手を挙げて「すんごい好き!」とは言いがたいなと思いました。あのシーンは、「こんな腐りきった世の中に未練はない」と思いながらイーストウッドが死んでいったように(僕には)見えたから。「いや違うよ、イーストウッドは絶望してないよ」っていう人がいたら教えて欲しいです。
同じように主人公が暴力に直面する映画で、去年『ノーカントリー』ってのがあったんだけど、僕はこの映画が大好きで、それと比較してみると主人公のスタンスが明らかに違うんですよ。意味不明な暴力がはびこる世の中を目の前にして、しぶしぶながらも「OK。この世界の一部になろう」って受け入れるのが『ノーカントリー』。反対に、「じゃあ、もういいや。バイバイ」ってお別れするのが『グラン・トリノ』。映画の面白さはどちらも甲乙付けがたいくらい魅力的なんだけど、主人公がとるスタンス1つで見終わったあとに受ける印象はこうも違うのかと思いました。

『チェイサー』は、映画的興奮がギッシリ詰まった傑作中の傑作。役者の演技といい、臨場感あふれるカメラワークといい、ラストの展開といい、脳天が揺さぶられるほどの衝撃を受けました。ただ、連続殺人鬼モノだけにエグいシーンもけっこうあるので、暴力描写が嫌いな人にはお薦めできません。

『フロスト×ニクソン』は、ウォーターゲート事件で辞任しながらも公式の場で謝罪しなかったニクソン大統領に、テレビ司会者のフロストが謝罪の言葉を引き出すべくインタビューを仕掛けるっていう映画。これは「インタビュー」が好きな人なら誰でも楽しめるんじゃないかな。1つ1つの質問と回答のやりとりが、ボクシングの打ち合いのように描写されるところが最高です。この映画では、1本のインタビューを取るのに数千万円をつぎ込む過程も描かれているんだけど、たった1つの質問を考えるのに4人の男が数週間もかけてじっくり取り組むんですよ。このスケールのでかさ!
『ローリングストーン』誌が立ち上がったばかりの頃、ボブ・ディランのインタビューにこぎつけるまでに編集長のヤン・ウェナーが2年近くもディランに取材依頼の手紙を書き続けたって話もあるけど、価値のあるインタビューっていうのは、本当にそれくらい苦労してやっとたどり着けるものなんだよね。で、それだけ力を入れたインタビューっていうのはやっぱりこうして何十年たっても全然色あせないんですよ。(と、しみじみ......)
でもって、フロスト側にはニクソンオタク(田中角栄で言うところの、立花隆みたいな人物)がブレインとして付くんだけど、ニクソン側にも超絶鉄壁のキレ者がいて、全然ニクソンのガードが下がらないんだわ、これが。もうマイク・タイソン VS たこ八郎みたいな感じになっちゃって、「たこ、がんばれ! たこ、負けるな!」って手に汗握りながらフロストを応援するんだけど。でも、この映画、ニクソンのほうも憎めないように作られているのがまた面白いところだったりします。
ニクソンは、最近だと『ウォッチメン』でもキーマンの1人として出てきたけど、たぶん人間として相当いじり甲斐があるんだろうなと。オリバー・ストーンの『ニクソン』を観ただけじゃわからないような業の深さがありそうなので、機会があれば伝記でも読んでみようと思います。
あ、『スター・トレック』は、映画館に暇そうなオッサン(含む、俺)がギッシリ集まってガン見しているシチュエーションも込みで非常に面白かったです。新宿のバルト9が、ギャル率2%、スメルズ・ライク・加齢臭な空間に早変わりしてました。どうして宇宙モノの映画って、ああいう気持ち悪い男(含む、俺)ばかりが吸い寄せられてしまうんだろう。それはともかく、J.J.版『スター・トレック』は暇つぶしに最適なジェット・コースタームービーとしてよくできてると思うので、ぜひ女性の方も彼氏に誘われたら気持ち悪がらずに付き合ってあげてください。ちなみに、うちの嫁さんを誘ったら断られました......。